初めての土地、初めての景色、初めての工場は滋賀県にあった。
新幹線を降り派遣会社が迎えにきてくれたバスに乗る。
今日から新しいスタートだ。
物思いにふけながらふとバスの外を見る、、、
そこにあるのは山、川、田んぼのみ、、、
これが田舎か、、、本当なら心が洗われ安らかな気持ちになるのだろう、、、
滋賀県の方には申し訳ないが、この風景を見ながら俺はこう思ったのを鮮明に覚えている。。
島流しかな?
これからこんなところでやっていけるのか?一気に不安が押し寄せる。
「パルコもねぇ!東急ハンズもねぇ!ヨドバシもねぇ!オラこんな村は嫌だぁ〜」
気分は完全に吉幾三モードに突入していた。
目的地に着いて住むアパートや工場を一通り案内された。
その中で同期で20歳の青森出身のW、同じ派遣で先に働いていた沖縄出身の40代のSと出会った。
色々話をしたがぶっちゃけこの時の私は全然2人に興味は無かった。
「俺はお前ら底辺とは違うのだ!」
今までは金を持っていた!生き方も違うのだ!
当時の俺はそんなクソみたいなプライドと工場に対する偏見があったのだろう。
現実は借金もあり所持金1万くらいしかない一番の底辺は自分だというのに、、、
初めての工場は某軽自動車の盛んな◯イハツだった。
配属先も順調に決まり、いよいよ新しい仕事がはじまった。
最初はインパクトドライバーでボルトを締め付けるなど慣れない作業で戸惑った。
なにより当時は軽自動車の売れ行きが半端なくて1000台ほど作らなきゃいけないくらい大忙しだった。
毎日フル残業をし鈍った体を叩き起こした。
だが1週間も経てば仕事にも慣れて、しょうもない妄想で1日をやり過ごす日々だった。
所属していた派遣会社では給料の前払い制度というものがあり、
上限はあるが1週間働けばいくらか給料を前払いしてくれた。
当然お金の無い俺は泣く泣く前払いを希望した。
俺以外にも希望する人が列を作っていた。
「俺も同類なのか?」
そう感じこの時再び惨めな気持ちになったのを覚えている。
そこで沖縄出身のSさんと再び出会った、、、
彼は前払いを貰った後俺に声をかける。そして
彼の放った一言が再び私を戦場へ駆り立てる
そう決して口にしてはいけないあの言葉だ、、、
だがSは容赦無く銃弾のように鈍いあの言葉を吐く。
「パチスロ行かない?」
まったく、、、確かにパチスロはやっていた。
確かにパチスロは楽しいよ?お金なくて最近行きたくても行けてなかったよ。
お金無くなってから特にやってましたよ。
そんで借金まで作りましたよ?
でもね?考えてごらん?私はそんな自分を変えにきたんだよ?
ここで耐えてビックマネー掴んでこんな底辺とはサヨナラしにきたんですよ?
ましてや40歳にもなってギャンブルでお金ない人間と一緒にされたくなし。
10万、20万くらい勝ったところでなんだっての?
俺は君たちと生きてきた環境が違うんだ!
分かるだろ?元々多くのお金を稼いでいて
もっと何百、何千万というお金をどんどん手に入れる予定なのさ!
まったくそんな俺をパチスロに誘うだなんて恥を知れ
、、、、、全く、、、、、パチスロなんて、、、、
知ってた。
〜後編へ続く〜
後編はこちら →[工場マン物語]第2話: 人は簡単に変われない[後編]